人類の危機デジタルジレンマ

世界でデジタル化が進むにつれ、自然災害にしろ、人為的災害にしろ、人々は危機的状況下で新たなリスクにさらされています。ここでは、あなたを混とんとした世界に誘い、インタラクティブな冒険の旅にお連れします。

あなたの選択は？

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警告：ビデオには、光感受性症の方に影響を与える可能性のある点滅光および不安定な画像が出てきます。

以下のような描写も出てきます：戦争や危機の画像、負傷者の画像、突然の大きな音。

ここでは、正しい選択をしたかどうか、を問題にしているのではありません。
選択をするために正しい情報を得ていたかどうか、が問題なのです。

結果が良かった／悪かった、という単純な問題でもありません。一筋縄ではいかなかったでしょうが、データ保護についての知識を身につければ、より賢い選択ができるようになるでしょう。デジタル空間においては、一
つ一つの選択があなたの運命を左右しかねません。さらに深く知りたい方は、以下のコンテンツを覗いてみてください。

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Data protection handbook

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コネクティビティとデータ保護

コネクティビティとは、デジタルまたはアナログ技術を用いて他者とのつながりを維持する能力です。緊急時には、友人や家族がどこにいようと連絡が取れ、今どんなことが起きているのかを適切に伝える最新情報を入手することが重要となってきます。接続が失われると、他者との連絡や情報共有が難しくなるどころか、多くの場合不可能になります。このため、危機に見舞われた人たちにとっては、医療や教育などの基本サービスを見つけてアクセスしたり、家族や友人と連絡を取ったり、場合によっては命に関わる決断をしなければならなくなった時に必要な情報を見つけたりすることが極めて困難となります。コネクティビティは支援を提供する際、そしてレジリエンスを構築する際のカギとなり、革新的なソリューションを見出し、時代の潮流に乗った人道支援を提供するうえで重要です。

今の時代、コネクティビティはほとんどの場面においてなくてはならないものになっています。ところが、非常時にはインフラが損害を受けて通信網がダウンすることが多く、最新情報へのアクセスや大切な人たちへの連絡ができなくなります。そのため、複数の人道支援組織は、情報提供を援助の一環と見なし、コネクティビティを再構築するためにWi-FiスポットやSIMカード、電話に加えて、さまざまな通信設備を提供するケースが増えています。ただし、直面している危機がどんな性質かによって人々のニーズは異なります。接続した後にどのように使うのか、誰がその使用を監視できるのかも状況によって異なります。そのため、人道の見地からコネクティビティを再構築するには、デジタルにおける責任や使いこなす知識と能力、そして、社会の隅々まで行き渡るシステムを考慮する必要があります。

コネクティビティの提供にあたり、人道支援組織が通信会社などの第三者に頼ることが増えています。このため、生成されるデータ（ユーザーID、通信パターン、利用頻度など）に誰がアクセスするのかや、データをどう処理するのかについての懸念が生じています。原則として、人道支援の目的で集められたデータをそれ以外の目的で用いるべきではありません。そのため、人道支援組織には、収集したデータを不当な監視から適切に守る義務があります。

データにアクセスする人または組織が、そもそもアクセス権をもっているか、また、正当な目的（たとえば警察）で使用するのかによって、監視は合法である場合と非合法である場合があります。人道支援組織とそのパートナー（通信会社など）は複数の国にわたって活動していますが、国によって、どういった状況で誰がどのようなデータにアクセスできるのかについての規定は異なります。このため、人道支援組織にとって、収集したデータが人道支援以外の、悲惨な結果をもたらしかねない目的で使われないように徹底することは極めて困難になっています。

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ヘイトスピーチとソーシャルメディア

オンラインコミュニケーションのプラットフォームは、自然災害や武力紛争の影響を受けた何百万もの人たちにとってのライフラインとなっています。ソーシャルメディアやメッセージアプリによって、家族や友人と連絡を取り、食べ物やシェルター、医療支援を得られる場所などについての情報にアクセスすることができます。さまざまな危機にどう備え、対応し、立ち直るかを、それらの情報が直ちに示してくれます。

オンラインでつながる人が増加し、被害にあった人たちや、そうした人々に寄り添おうとする組織にとってこれらのプラットフォームが重要なコミュニケーションのチャンネルとなっています。ただし、検閲されない瞬間的なやり取りが常に流れることにより、情報が武器となる可能性があります。つまり、一般大衆を挑発したり、あざむいたり、刺激するような方法で、故意または無意識に利用され、危機的状況や分断を招くことになりかねません。

この点でもっとも憂慮すべき最近の傾向は、SNS上のヘイトスピーチの増加です。特に危機に見舞われたり、政治・社会情勢が緊迫した状況下では顕著です。通常、デジタル空間におけるヘイトスピーチの発端は不寛容な言論で、そこからヘイトに満ちた言葉が広がっていき、オンラインチャンネルを通じて増幅されます。アナログ、デジタルに関わらず、通信システムを通じてこうしたメッセージが広まり、集団的な緊張を巧みに高め、異なる集団のメンバーに対する暴力を引き起こします。移民やその他のマイノリティに対する攻撃は増える傾向にあり、オンラインでの扇動的なスピーチと暴力行為の関連について新たな懸念が生じています。対立は感情的、心理的、社会的、物質的、そして身体的な危害をあたえかねません。世界中のほぼすべての大陸で、こうした衝突が報告されています。

事実を歪曲し、扇動的で巧みな言葉を広めるためにデジタルツールを使用すると危機的状況や紛争に大きな影響をもたらし、新しい、予測不可能な形で社会の脆弱性を高めます。デジタルトランスフォーメーション（デジタル技術による変革）以前ですら、通信技術（印刷物、ラジオ、テレビなど）は暴力を駆り立てる格好の手段でした。プロパガンダやヘイトスピーチがどのように拡散され破壊的な効果を生み出すか、その結果を近年の歴史の中に見る時、最も悪名高き例がルワンダとナチスの大虐殺です。デジタル空間ではさらに拡散の速度が速まり、これまで情報伝達における潜在的な危害の軽減に努めてきた人たちですら、もはや手に負えなくなっています。

ソーシャルメディアによって民主化を掲げる活動家が力を得る一方で、同じ技術が悪意に満ちたグループの組織化とメンバー募集に一役買っています。また、陰謀説をあおり、差別を助長するような極端な言論を展開するサイトが、そのサイトを訪れたことがないような人にまで幅広く到達し、目に触れるようになります。デジタル情報技術の急速な発展および紛争の凄まじさや暴力性、被害を悪化／加速させる可能性がより高まってる現状を考えれば、これは重要な懸念事項です。

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生体認証

生体認証とは「生物学的特性や行動特性に基づく個人の自動認証」のことです。つまり、指紋や眼球の虹彩、または個人の行動様式（たとえば歩き方やパソコンの打ち方）などの測定可能で独特な人間の特徴を捉えます。偽造することが極めて難しいため、生体認証は最も信頼性の高い、手軽な本人確認手段のひとつです。

他の手段よりずっと簡単に個人を特定し、人道支援の乱用を防ぐことができるため、人道支援組織による利用が増えています。従来の紙ベースの本人確認書類（紙の身分証明書など）のほうが偽造されやすく、援助を受ける際に重複や拒否、詐欺につながる可能性があります。また、紙ベースのIDだと、うっかり紛失、破損したり、没収されやすかったりします。その一方で、生体認証なら、出身地や祖国から逃げてきた場合など本人と証明できる他の手段がなくても身元確認が可能です。偽造が難しいだけでなく、デジタルで作成・保存された生体認証データは、人道支援の効率的な管理にも役立ちます。

同時に、容易かつ長期的に本人特定ができることで、倫理上、またデータ保護の観点で深刻な問題も発生します。人道支援組織は、支援対象者の援助と保護という明確な目的のためにデータを収集します。そのため、人道支援以外の目的でデータを用いることは、データの使用方法や誰がデータにアクセスできるかによっては組織とデータ提供者の間の信頼を裏切ることになり、保護の観点から両者がリスクにさらされることになります。

これは、人道目的で使用されるデータに関する共通の懸念ですが、偽造が困難であることを考慮すると、生体認証データについては問題がより複雑化します。生体認証は、各個人に特有のもので、容易に保存、共有、照合でき、しかも組織、さらには国境を越えてそれらが可能になるため、効率的に支援を組織し、配付することが可能になります。その一方で、人道支援以外の目的に使用される場合（合法なものだけを挙げると、警察、安全保障、国境警備、移民流入監視など）は問題に発展する可能性があります。

人道支援組織は、たいてい国家の安全保障やテロ対策を理由に国や地方の当局から人道支援とはかけ離れた目的のためにデータを共有するよう求められ、その圧力は高まっています。生体認証（およびその他の）データを収集・保存するための技術を供給する第三者も同様の圧力にさらされています。生体認証データに対する関心は、ハッキングなどの不正な手段を用いて犯罪集団がアクセスを試みる可能性をも高めているため、データ保護に関するより深刻な懸念が増大しています。

危機的状況下で援助を受ける人たちは、自分の個人情報がのちに自分たちに危害を加える目的で使用されることはない、という理解のもとデータを提供しています。

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デジタル送金プログラム

送金プログラム（CTP）とは、あらゆる形態の現金・金券を用いた支援のことです。実際には、特定の店舗であらかじめ指定された製品を人々が購入できるよう、多くの場合デジタルで送金されます。CTPは危機的状況下にある人々が利用できる支援のひとつです。その使い方は状況によって異なります。本来の目的だと、CTPは現物支給（食料や機材など）の代替または補足として用いられます。命を救い、生活を守り、危機からの回復を促進するための、最も柔軟で効果的な仕組みのひとつと考えられています。

これは主として、特定の危機に置かれた人たちの選択とニーズを最大限に尊重して実施されます。CTPにより、地域の暮らし、経済、市場を活性化させ、人道的対応により地元経済に悪影響が生じないようにすることもできます。そしてたいていの場合、現物支給よりも速く、コストパフォーマンスも高くなります。必要な物を現地調達できるかや、現金を実際に受け取れる状況にいるか（たとえば、SIMカードや携帯電話をもっているかどうか）など、状況によって効果は当然変わってきます。ただし、これまでの研究と実践から一つ言えることは、人々のニーズや希望に沿った人道支援を提供し、現地の市場を支援し、金融機関と人々をつなぐなどの際にCTPが効果的であるということです。

電子的でデジタルなソリューション（ICカードや携帯電話を用いて提供される電子金券とセットでのモバイル・バンキングやプリペイドカード、銀行送金など）は受取人と支援者の両方にとって比較的安全で、より説明責任が高いとみなされていて人気が高まっています。ただし、ここで考慮すべき重要な点は、人道支援団体がこうした送金の設定や実施を銀行や携帯通信事業者のような第三者に頼っている、つまり、送金プログラムの中で収集された個人データが人道支援とは関係のないパートナー組織にも利用可能となっていることです。

お金を正当な受取人に確実に届ける必要性から、多くの場合こうしたプロセスの中で収集されるデータは従来の支援物資配給用に集められるデータよりも詳細なものとなります。民間パートナーがこれらのデータにアクセスできるため、パートナーがデータをどのように扱うか、誰とデータを共有する可能性があるか、それぞれに異なる法律の枠組みやパートナー契約に従うことについて検討することが重要です。原則として、人道支援目的で収集されたデータは、援助を受ける人を苦しめる可能性があるため、人道支援以外の目的（信用プロファイル、警察、国境警備、広告など）に用いられるべきではありません。

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人類の危機 デジタルジレンマ

ここでは、正しい選択をしたかどうか、を問題にしているのではありません。 選択をするために正しい情報を得ていたかどうか、が問題なのです。